NPOシンクタンク京都自然史研究所 西村 進
宍粟市千種市民局の阿曽局長から電話があり、早速送っていただいた一升びん入りのラドン水(当時は約11.5マッヘのラドンを含んでいたが、その半減期は3.824日であるので、汲み上げてから数日でラドンはほとんど壊変して測れなくなった)が、添付の手紙とともに送られてきた。早速開封して瓶を見たところ、濁りも沈殿も見られなかった。
その泉水が採取された頃は、千種町の依頼で兵庫県工業技術センターの故赤松信技師とともに千種川の源流を探り、カンナ流しの跡をたどって、自動車が登れない道路工事現場の岡山県との境の小さな峠の風化した花崗岩の割れ目からの湧水を見つけ、5mほどの鉄管を人力で叩き込み、採水して11.4マッヘの値を得た(泉水1㎏ 中8.25マッヘ=111ベクレル以上が放射能泉)(ちくさ通信4参照)。その湧水を昭和48年1月に5本汲み、蔵に納められていたらしいと聞き、非常に驚いた。「この湧水は腐らないよ」といった記憶はあるが、42年後もそうであるとは考えもしなかったし、経験もなかった。
早速、簡易に測定した(7月28日)。無色透明、口に含むも無味無臭。pH: 7.8:導電率(この値は水に溶け込んだイオンの濃度を示す)89.0μS/cm (測定時水温24.3℃)(ちなみに、京都市の水道水は205.2μS/cm)。 一方、この水を180mℓほどとり、東邦大学医学部の加藤尚之先生の研究室に送り、保存後の細菌数の測定をしていただいた。 細菌培養用の寒天培地上に10mℓを滴下し培地に塗り広げ、35℃で48時間培養し生育した集落数(コロニー数)を計数した。その結果異なる4~5種の細菌が生育しコロニーを形成した。
その結果1mℓあたり3.0×103cfu/mℓの生菌が存在したことを示す。
この値は非常に少なく、もともと細菌が少ない湧水であったことを示している。
この結果、千種川の源流の花崗岩の裂罅(れっか)からの湧水は、純水に近い、細菌もほとんどいない非常にきれいな水で、そのうえラドンの放射能でさらに細菌が少なくなっていた湧水であったことが示された。これが名水として長く利用される理由であろう。
2015年 9月